人生の主人公は自分 「前向き」にチャレンジを ~卒業式式辞~

式 辞

 厳しい寒さを乗り越え、桜の開花を、今か今かと待ちわびる今日の良き日。つくばみらい市立伊奈中学校「第53回卒業証書授与式」を挙行するにあたり、卒業生の保護者皆様のご臨席を賜り、心より感謝申し上げます。

 

 保護者の皆さま、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。義務教育の修了は、子育ての大きな節目であり、喜びもひとしおのことと存じます。また、この三年間、本校PTA活動をはじめ、諸行事などへの、多大なるご理解やご協力に対しましても、深く感謝申し上げます。

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今、卒業証書を受け取り、三年間の様々な出来事が脳裏を駆け巡っていることと思います。楽しかったことはもちろん、我慢したことや苦しかったことなど、そのすべてが、かけがえのない思い出の日々だと思います。

 皆さんのそんな三年間の中学校生活を、ともに過ごす縁をいただいたことは、私にとって、かけかえなない時間となりました。

 思い起こせば三年前、日本全国の小中学校でも、新型コロナウイルス感染拡大が懸念され、入学式後も臨時休校が続き、先の見えない不安な状況でした。そういった中、伊奈中学校では、県内に先駆け、オンライン朝の会を実施し、皆さんと先生方がつながりをもとうという「絆プロジェクト」に取り組みました。

 また、スキー宿泊学習が1年延期になったり、例年行われていた団対抗の体育祭や稲穂祭が中止になったり、本当につらい我慢の1年だったと思います。

 しかし、みなさんが2年生になり、スキー宿泊学習や、3年生の時の修学旅行を、皆さんとともに体験できたことはとてもいい思い出になりました。

 

 

 また、卒業生のほんの一部ではありましたが、半年間理科の授業を行うことができ、とても貴重で、忘れられない時間を過ごすことが出来ました。

  そして、今年3年ぶりに開催された総体や各種コンクール等で素晴らしい成績を残すことができました。特に部活動では、吹奏楽部をはじめ、4種目の競技で県南大会、県大会を勝ち抜き、関東大会に出場することが出来、皆さんが100%頑張った成果が表れた素晴らしいものでした。

 そして、他校の校長先生方から、「伊奈中の生徒はすごいね。」と多くの称賛をいただきました。本当に、私にとって自慢の3年生であり、特別な思い入れのある学年でした。

 

 さて、この卒業という節目に当たり、みなさんに期待を込めて申し上げたいことがあります。みなさんは本田という会社を知っていますか。今は大変大きな会社ですが、会社をおこしたときは、小さな会社でした。

 その小さな会社だったころ、社長の本田宗一郎さんという人は、社員にこう問いかけます。「ブレーキは何のためにあるんだ」と。

 社員は皆「止まるためです。」と答えました。

 本田さんは社員に「ブレーキは、速く走るためにあるんだ。ブレーキがあるからこそ、速く走る車をつくれることができるんだ。」でした。

 このような発想の転換で、性能のいい、スピードの出る車の開発にチャレンジしたそうです。そして、世界最高峰の自動車レース「F1」にチャレンジしました。そして世間では、湯たんぽをガソリンタンクに、自転車にエンジンを付けたバイクメーカーには「F1は無理、そんなに甘くない」といわれていました。しかし、試行錯誤の末に、1年間16戦のレースで15回の優勝を果たした時もありました。

 

  これからの人生の中には、うまくいくことも、うまくいかないこともあるでしょう。でも、「皆さん、胸を張って生きてください。己の弱さや不甲斐なさに、どれだけ打ちのめされようと、心を燃やしてください。歯を喰いしばって前を向いてください。あなたが足を止め、うずくまっても、時の流れは止まりません。」

 人にはオンリー1の‘よさ’があります。「前向き」なチャレンジこそが、成長の糧となると、私は信じています。

 喜びや幸せは誰かが運んできてくれるものではありません。「人のせいにしない」生き方、人生の主人公は自分なのだという気持ちで歩んでください。

 最後に、皆さんが旅立つこれからの社会は、AIなど目覚ましい科学技術の進歩、変化が激しく予測困難な時代、グローバル化、多様な価値観が存在する世の中です。

 ですから、そんな社会を生き抜く皆さんに送りたい言葉があります。今から200年ほど前、イギリスの生物学者で「種の形成理論」を構築した人物、「チャールズ・ダーウィン」という人の言葉です。

 それは、「最も強いものが、生き残るわけではない。あるいは最も知的なものが、生き残るわけでもない。最も変化に対応できるものが生き残るのだ。」というものです。

 

 

 本日は、ご多用の中、ご臨席を賜りました、保護者の皆様に、重ねてお礼を申し上げますとともに、これまで、本校にお寄せいただきました、格別のご理解と、ご協力に対しまして、教職員を代表して、お礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 卒業生の皆さん。お別れの時です。新たなステージ向かう167名の限りない前途に、幸多きことを願い、式辞といたします。

令和五年三月十三日

つくばみらい市立伊奈中学校 校長 長塚 和徳